取材
高槻で創業50年。住まいづくりの技術から広がる、井上工務店の新たな挑戦「スチールアーチ」
高槻市大塚町に拠点を構える「株式会社井上工務店」。 1975年の創業以来、高槻市・茨木市を中心に、新築や建替え、リフォームなど、地域に根ざした家づくりを続けてきた工務店です。 2025年には創業50周年という大きな節目を迎えました。 注文住宅では、耐震性や断熱性といった住宅性能はもちろん、一人ひとりの暮らし方に合わせた自由設計やデザインにもこだわり、長く安心して暮らせる住まいを提案しています。 そんな井上工務店が、住宅建築で培ってきた技術を生かしながら、新たな事業として取り組んでいるものがあります。 それが、曲線を描く特徴的な外観を持つ「スチールアーチ」です。 今回は井上工務店を訪ね、スチールアーチを取り扱うことになった背景や一般的な建物とは異なる特徴、施工方法、そしてこれから考えている展開についてお話を伺いました。

創業50年、高槻で積み重ねてきた家づくり
井上工務店の創業は1975年。 高槻市・茨木市を中心に、新築・建替え・リフォームなど、長年にわたり地域の住まいづくりに携わってきました。 現在の高槻市大塚町の社屋は、創業45周年記念事業として2020年に建設されたもの。 住宅では、地震災害に強い家づくりを大切にしながら、性能だけではなくデザインや生活動線にも目を向け、それぞれの家族が思い描く暮らしを形にすることを大切にしています。 そして、井上工務店の取り組みは住宅だけにとどまりません。 木造・鉄骨造の工場や倉庫、マンションといった非住宅建築、既存建物の大規模修繕、土木・公共工事、さらには不動産事業まで、建築に関わる幅広い分野を手がけています。 そうした技術や経験を生かしながら、新しい建築の可能性にも目を向けているのが井上工務店です。新しい事業の柱として出会った「スチールアーチ」
スチールアーチを始めるきっかけになったのは、「新しい事業の柱をつくりたい」という考えからでした。 井上工務店が運営するアメリカン雑貨店「COLOR」と今後の事業について話し合うなかで、アメリカンテイストとも親和性があり、なおかつ工務店として培ってきた施工技術を生かせるものを探していたそうです。 そこで出会ったのが、金属のパネルを連続させ、大きなアーチを描くように組み上げていくスチールアーチでした。 住宅や店舗、倉庫などの建築に携わってきた井上工務店だからこそ、単に新しい商品を扱うのではなく、「自分たちの技術を生かして施工できる」という点も大きかったといいます。 COLORという店舗から始まった新しい挑戦と、もともと持っていた建築の技術。 それぞれを独立したものとして考えるのではなく、相乗効果を生み出せる事業へ育てていこうとしています。ビスを極力使わず、パネルをかしめながらつくる
スチールアーチの特徴の一つが、その施工方法です。 アーチ状の金属パネルを組み合わせながら建物を形成していきます。 取材で特に印象的だったのが、パネル同士の接合方法についてのお話でした。 一般的な類似建築では、屋根部分をビスで固定する方式もありますが、スチールアーチでは専用の機械を使用し、パネル同士を「かしめる」ように接合していきます。 もちろん必要な部分にはビスを使用するものの、屋根面で使用するビスを抑えられるため、経年劣化による雨漏りのリスクを抑えやすいことも特徴の一つだといいます。 見た目のインパクトだけではなく、施工会社としての視点から構造や施工方法まで考えられている建築です。「朝出かけて、帰ってきたら建っている」ほどの施工スピード
もう一つ驚いたのが、施工の速さです。 もちろん基礎工事などは別に必要となりますが、基礎が完成した状態からスチールアーチ部分を組み上げる工程では、シングル構造の場合、規模によっては1〜2日ほどで立ち上がるケースもあるそうです。 取材中には、 「朝、仕事に行って、帰ってきたら立ち上がっているくらい」 という話も。 大きな建物だけに長期間の工事を想像してしまいますが、アーチ部分そのものは想像以上のスピードで形になっていきます。二重構造にすることで、断熱性や音にも配慮
スチールアーチには、一枚のパネルで構成するシングル構造だけでなく、二重構造にする仕様もあります。 二重構造では、外側と内側の間にロックウールなどの断熱材を施工。 断熱性を高めるだけでなく、雨音などを軽減する効果も期待できるそうです。 金属製の建物と聞くと、「夏は暑くないの?」「雨の日は音が響かない?」と気になる方もいるかもしれません。 シングル構造では雨音が聞こえやすい一方、二重構造にすることで、室内環境をより快適にすることができます。 用途や求める性能に合わせて仕様を考えられることも、スチールアーチの面白さです。倉庫から店舗、ガレージ、事務所まで
さらに興味深いのが、その用途の広さです。 井上工務店が施工に携わっている事例でも、農業用倉庫をはじめ、さまざまな用途でスチールアーチが採用されています。 倉庫としてはもちろん、ガレージや事務所、店舗など、アイデア次第でさまざまな使い方が考えられます。 特に店舗との相性については、取材中にも話が盛り上がりました。 大きなアーチを描く外観は、一般的な建物とは大きく異なります。 車で前を通っただけでも、「あの建物は何だろう?」と気になってしまうような存在感があります。 実際に、特徴的な建物そのものがきっかけとなり、店舗へ足を運ぶ人がいるケースもあるそうです。 飲食店、美容室、物販店など、店舗同士の差別化が求められるなか、「建物そのものを広告にする」という考え方もできそうです。
間口
6.5m
奥行
7.44m
最高高さ
3.85m
電動シャッター高さ
2.3m
電動シャッター幅
3.5m
妻面仕上げ
シングルパネル(ウエスタンレッドシダー)
断熱処理
発報ウレタン吹付断熱
防災分野でも広がり始めるスチールアーチ
スチールアーチの可能性は、店舗や倉庫だけではありません。 取材では、防災用途での活用についてもお話を伺いました。 高知県では、スチールアーチを備蓄倉庫など防災に関わる建物として活用する動きも出ているとのこと。 アーチ状にパネルを連続して接合していく特徴的な構造を生かし、防災分野での活用も検討されています。 さらに、防災関連の展示会でスチールアーチを紹介する動きもあるなど、住宅や店舗とは異なる分野へも可能性が広がっています。 倉庫として使う。 店舗として使う。 ガレージとして使う。 そして、地域を守るための施設として使う。 一つの形から、使う人によってまったく違った建物へ変えることができ、選択肢は多岐に渡ります。工務店だからこそできる、新しい建築への挑戦
今回のお話を伺って感じたのは、井上工務店が単に「スチールアーチという商品を販売している」のではないということでした。 創業から50年。 住宅をはじめ、さまざまな建築に携わってきた会社だからこそ、土地や用途を考え、建物としてどう成立させるかまで含めて提案することができます。 「こんな使い方はできるのか」 「店舗として建てたらどうなるのか」 「倉庫と事務所を組み合わせられないか」 そんなアイデアから建物を考えられるのも、工務店が手掛けるスチールアーチならでは。 現在も高槻周辺だけに限らず、さまざまな地域で施工に携わっているそうです。 長年続けてきた家づくりを大切にしながら、その技術を新しい建築へ。 高槻で創業50年を迎えた井上工務店の、次の挑戦が始まっています。




